カビについて(引用)・菌との共存

2023.02.25 (火)

 

食品のカビについて

 


モチのPenicillium sp. パンのCladosporium sp.
我国は地理的に温帯地方の島国で気候が温暖多湿のために、多くの種類のカビの生えやすい環境が整っています。

カビとは細菌(バクテリア)やウイルスと同じく微生物の仲間であり,微生物学的には「真菌類」と呼ばれています。

古くからカビをうまく利用してさまざまな種類の発酵食品を考えて、その甘みを食してきました。

また、カビは抗生物質などを代謝産物として産生することから医薬品の開発にも用いられています。

しかし、反面、カビは食品中で増殖して異味、異臭等の品質低下を引き起こし、種類によっては発がん性のカビ毒(マイコトキシン)を産生します。

さらに、カビは健康面においてアレルギー喘息、水虫などの原因となり、環境面では住居の浴室、台所、じゅうたんなどにもよく発育してそれらを劣化させます。

 

このように私たちにとって、カビは有益と有害の両面をもっています。

そこで、これらのなかで食品を対象としたカビについて取り上げ、ご紹介します。

 

主なかびの種類
Penicillium sp.(ペニシリウム) アオカビ

食品から頻繁に検出され、青緑色の集落を作ります。種類は非常に多く、その中には抗生物質のペニシリンを作ったり、チーズの製造に用いられるものもあります。

また、黄変米の原因となったり、カビ毒を産生するものも含まれます。多くの種類の食品、ほこりや土壌など環境中に広く分布しています。

 

Cladosporium sp.(クラドスポリウム) クロカビ(クロカワカビ)

住居内に黒色の集落があればほとんどがこのカビで、最も多く空中にほこりとして浮遊し、木材、皮革、繊維など多くのものを劣化させます。多くの種類の食品からも頻繁に検出されますが、かび毒の報告はありません。

 

Aspergillus sp.(アスペルギルス) コウジカビ

日本酒、醤油など醸造に用いられるもの、発ガン性の強いカビ毒(アフラトキシン)を産生するものなどPenicillium と同様、種類により有益と有害をもたらします。

多くの種類の食品に分布しています。種類により集落の色調は緑、黄土色、茶、黒、白、青緑と様々です。

 

Alternaria sp.(アルタナリア) ススカビ

住居内では湿度の高いところを好んで分布しており、灰色~黒色の綿毛のような集落を作ります。野菜、果実に多く、それらの腐敗の原因となる植物病原菌であり、対象植物に対して特異的なかび毒を産生します。

 

Fusarium sp.(フザリウム) アカカビ 

湿度の高い浴室、洗面所やトイレなどに分布しています。白色、黄色、褐色、ピンク色、赤橙色、赤紫色など様々の色調の綿毛状集落と作ります。ムギ、トウモロコシの植物病原菌でもあります。数種類のかび毒の産生が知られています。

 

Wallemia sp.(ワレミア) アズキイロカビ

じゅうたん、畳など居住内の乾燥した環境に分布しています。食品では糖度の高い羊羹、アン、饅頭、カステラなどの食品、水産や果物の乾燥食品からよく検出されます。褐色~チョコレート色の比較的小さな集落を形成します。カビ毒は産生しません。

 

Eurotium sp.(ユーロチウム) カワキコウジカビ

我国での一般名のとおり、やや乾燥した環境を好むカビです。糖度または塩濃度の高い菓子類、ジャム、佃煮や米などの穀類、水産乾燥品などからしばしば検出されます。毒性の強いカビ毒の産生は報告されていません。

 

Aureobasidium sp.(アウレオバシジウム) 黒色酵母様菌  

酵母と間違えられやすいカビです。白色から次第に黒色の湿潤した集落となります。住居内では湿度の高いところに好んで発育します。食品中では清涼飲料水、果実、野菜などから検出されます。なかには食品添加物(増粘安定剤)として用いられる種類もあります。

 

食品の種類とカビ

食品の種類とその食品に存在するカビとはおおまかではあるがある程度の関係があるといわれています。

以下は、主な食品とその食品でよく発育するカビの種類です。

カビの分類
カビは生物学の分類では「真菌」というグループに入っており、パンやビールを作るために必要な酵母や、実はキノコもこの分類に含まれています。現在、カビは80,000種以上確認されており、簡単に分類すると接合菌類と子のう菌類、担子菌類および不完全菌類に分類され、それぞれ形状も生態もさまざまです。カビを顕微鏡で観察すると糸のようなものがたくさん絡み合っているのが見えます。このような形状から、カビの大半は糸状菌とよばれています。「菌」という文字が入っていることから大腸菌などの細菌とよく似ているように感じますが、意外にも「真菌」と「細菌」は大きく違います。「細菌」は大きさが0.5~5μmで、DNAを包んでいる核をもたない原核生物であるのに対して、「真菌」の菌糸の太さは5μm以上で核をもつ真核生物です。全ての生物は、核をもつかもたないかのどちらかで分類されますので、この2つは大きく異なるグループということが分かります。

カビの特徴
カビの基本形態は菌糸と胞子でできています。胞子が空気中を浮遊し、どこかに付着してそこから菌糸が枝分かれしながら伸びていくことで増殖していきます。つまり、目には見えていなくても空気中には常にたくさんのカビの胞子が浮遊しているのです。しかし、胞子が付着した先で条件が揃わなければカビは成長することはできません。カビが発生するには「温度」、「湿度」、「栄養素」が必要です。一般的なカビの最適温度は25~28℃で、湿度は80%を超えると急激に増殖しますが、なかには乾燥を好むカビもいます。また、ほとんどの有機物や無機塩が栄養になり、弱酸性下で最も発育しやすく、酸素を必須とすることも分かっています。これらのことから、普段の生活の中で水や埃が溜まりやすいところや手の届かない場所にカビが多く見受けられるのも納得がいくのではないでしょうか。

害のあるカビ
カビの中には「カビ毒」と呼ばれる毒素をつくるものがいます。現在、100種類以上のカビ毒が確認されており、人や家畜の健康に悪影響を及ぼすものとされています。ここでは身の回りでよく見られるカビについて、その影響と合わせていくつか紹介します。

Aspergillus flavus(アスペルギルス フラバス)
不完全菌類に属していて、食品では穀類(ピーナッツやトウモロコシ)に発生することが多いです。天然発がん性物質のなかでも最も強いアフラトキシンというカビ毒を産生するため、注意が必要です。

Fusarium graminearum(フザリウム グラミネアラム)
植物病原性をもつ、アカカビと呼ばれるものの一つです。穀類やその他植物に生え、トリコテセンというカビ毒を発生させて枯らせてしまうことが多く、「麦アカカビ病」の原因となっています。

Cladosporium cladosporioides(クラドスポリウム クラドスポリオイデス)
お風呂場などの身の回りによく見られる一般的なクロカビの一つです。アルコールや熱に弱いため、比較的除菌が可能なカビです。カビ毒のような毒性はありませんが、エアコンなどに繁殖することでアレルギーや気管支疾患の原因になる可能性があるため注意が必要です。結露がたまりやすい場所など、家の中の多くの場所で発生して広がりやすいため、一度見つけたらこまめに除菌することが重要です。

Penicillium glabrum(ペニシリウム グラブラム)
クロカビと並んで日常生活に馴染みのあるアオカビと呼ばれるものの一つです。空気中に常に浮遊しており、パンなどに生えているカビが大抵アオカビと考えられます。毒性はありませんが、アオカビが生えていれば毒性のあるアカカビも生えている可能性があるため、注意が必要です。

カビの利用例
人間にとって厄介なイメージが多いカビですが、なかには私たちの生活を豊かにするカビもいくつか存在します。

チーズ
一般的にアオカビと呼ばれ、不完全菌類のペニシリウム属に属しているPenicillium roquefortii(ペニシリウム ロックエフォルティ)は、「青かびチーズ」と呼ばれるロックフォルトチーズやブルーチーズを作る際に用いられています。一方、カマンベールチーズなどの「白カビチーズ」と呼ばれるものにはPenicillium camemberti(ペニシリウム カマンベルティ)というカビが用いられていますが、カビの種類で見ると同じアオカビのなかまになります。これらのチーズの独特な風味と香りは、カビが産生する酵素や代謝産物の働きによって生み出されています。

清酒
清酒の原料である米麹は米にコウジカビを生育させたものです。コウジカビには多くの種類がありますが、一般的に清酒の生産に用いられるのはAspergillus oryzae(アスペルギルス オリゼ)です。他にも焼酎にはAspergillus niger(アスペルギウス ニガー)などのコウジカビが使われており、それぞれの特性を生かした様々な使い分けがなされています。

カツオ節
カツオ節のなかでも、枯節や本枯節と呼ばれるものにはカビ付けがなされています。一般的には、Eurotium amstelodami(ユーロチウム アムステロダミ)やEurotium chevalieri(ユーロチウム チェバリエリ)などの子のう菌類のユーロチウム属に属するカワキコウジカビと呼ばれるカビが用いられます。カビが生産する脂肪分解酵素の働きや水分の吸収、旨味成分の生成などの効果によって、長期間保存可能な脂肪が少ない上品な味わいのカツオ節が出来上がります。